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本当についさっき、実の父親が、判明した。
眉間にシワを立て、さらに不機嫌さを増した浪川とその隣にいる浪川の父親。
父親である浪川孝行氏に許嫁が居ることを知って、身を引いた母親・草壁由樹。その間、恋愛期間中に母親に宿ったのが、俺と明。隠し子ではなく、隠れ子と言ったところだ。
わざわざ調べた浪川の行動力には、頭が下がる。こいつが納得するならと、髪の毛を提供した俺と明も、物好きだなと思ったが。
「親父は、本当に草壁先輩達の存在を知らなかったのか?」
「ああ…」
「愛し合った女を捨てて、許嫁を選ぶか普通?祖父さんの言い付けだろうと、突っぱねろよ。」
「すまなかった…」
「俺に謝られても、知らないさ。俺が生まれる、6年も前の話しなんて。」
「明君、透君。すまなかった。」
あの夢がなかったら、父親だからと納得なんてしてやれないだろう。今更、納得なんてしてやるもんかと、意地になっていただろう。
しかし、母親が俺達の存在を、隠していたなら、男としてその衝撃は、理解してやれない事はない。
下手をしたら、俺だって…。
目の前のこの人は、望んで母を捨てた訳じゃない。大企業の重圧に負けただけだ。
「母は、貴方と居て幸せでしたか?」
「…少なくとも私は、彼女との時間は、とても幸せだった。そうとしか答えられない。」
明らしい質問。それに対する孝行さんの答えも、偽りを感じない。
「母の妊娠は、別れた後で聞かされないままだったんですね?」
「ああ。絶対に会いに来るなと言われたからな。」
「そうですか…。」
この人の中で俺達が、存在しないままの36年は、知らなかったと言うのなら、薄情だとは思わない。美佐子と俺は、一度同じ過ちを犯しそうになった。回避できたのは、俺が美佐子を手離せなかったから。
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