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「さぞかし気分がよかっただろうな。心の中で、二股かけていたって事だよな?」 「捻くれた解釈するな。」 「捻くれもするさ!俺は、父親に大切にされた記憶が、ほとんどないからな!」 「浪川君。近くにいて、見守ってくれることが、大切にされたと思わないかい?危機的な情況が、転がってるとは思わないけど、何も聞かずに君は助けられたんじゃないかな?」 明は、穏やかに浪川を諭した。 「俺達には、自分の幸せより俺達の幸せを優先してくれた、父親がいる。それこそ悲しいと思う隙も与えないほど、忙しない家族だったけど、それが俺の家族なんだと納得できる。浪川…白黒付けたいだけじゃない。グレーゾーンが心地良い人間もいるんだよ。」 「俺は、納得できない。」 「ガキだね、お前。」 「まぁまぁ…」 「俺は…悔しいんだ。どうやっても勝てなかった人が、兄貴だった。正直納得もしたし、嬉しかった。だけど、親父は…」 浪川は、自分の存在にたいしても、怒っている。俺達のように、浪川さんが、お袋を選んでいれば、自分も居なかったかもしれない。だけどそれでも誰かの犠牲で今の自分があると揺れている。 「俺がDNA鑑定しなかったら、黙ってるつもりだったのかよ?」 「安易に口に出せる訳がないだろう。」 「そのわりに、草壁先輩に会わせた時。えらく驚いていたよな。」 「ああ、私の若い頃と由樹の面影があったからな。」 「だよな。津村にしつこく似てるって言われなかったら、スルーしてたよ。はっきりさせたくて、迷惑承知でサンプル提供してもらったんだ。」 怒ってるのか、拗ねているのか。良くわからない表情で、俺と明を見た。 「お前さ、二児の父なんだろ?少しはお父さんの気持ち推し量ってやれよ。」 「わからない。大事な相手なら、なんで傷つけられるんだよ。結婚前に妊娠させるなんてさ、傷つくだろ。」 「あれ?恋愛結婚だよね?…結婚まで?」 明は、冷やかすように浪川を見た。 「してたよ。…けど、何があるかわからないんだ。避妊は、してたよ。」 浪川は、まるで現場を見られたように、照れて明を怒鳴った。
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