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その轟音に驚いた俺はつい振り返り後ろを確認すると、まだ飛び上がった土がパラパラと落ちる音がする土埃が舞う光景が広がっていた。
俺がポカンとみていると彼女もそれに短く凄いな、と感嘆する。ゴクリ、と生唾を飲む音が聞こえた。まあ勿論俺のなんだが。それほどに凄まじい光景なのだ。
風が吹く。それが土埃をどこかへと運んでいく。俺は油断していた。大狼を、やったと思っていたのだ。
グルルルルルルッ
現実はそう甘くはなかった。
全身を血で濡らした大狼は、まるで憎しみの籠もったかのような瞳で此方を睨みつけていた。その時の俺は、まさに蛇に睨まれた蛙。今更だと笑われるかもしれないが、恐怖が俺を支配し身体がピクリとも動かなく、動かせなくなったのだ。
距離にして5~6mあるかないか。
「大丈夫だ。」
絶体絶命。そんな状況下で、彼女は笑った。
「私を信じろ。」
レイラさんがそう呟いた瞬間、後ろから俺を避けるかのように不自然な動きをする炎が大狼へと襲いかかった。
「んなっ!?」
「フフッ、遅かったじゃないか。道にでも迷ったのかい?」
俺はすぐさま振り返ると、そこにいたのはランタンを掲げた茶色いローブの集団であった。
「当主様でもあるまいし、そんなことはあり得ませんわ。」
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