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「職員室どこ…」
職員室を探して歩きまわり、時が経つこと約15分。最初から分かり切っていることだが、蓮華は完全に迷ってしまったようだ。職員室の位置どころか、自分が今いるところすらわからない。スマートフォンで時間を確認すると、後10分ほどで予鈴がなるところだった。
今のペースで探し続ければ、遅刻することも起こりうる。基本マイペースな彼女だが、さすがに焦り始めていた。
「転入初日か遅刻はさすがにまずい…」
立ち止まって途方にくれていたその時だった。
「どうかしましたか」
声がしたほうを振り返ると、さらさらの短い黒髪で、優しそうな雰囲気の男子生徒が物珍しそうに蓮華に話しかけた。
「えっと…。今日転入してきたんですけど職員室探してたら迷っちゃって…」
高校生にもなって迷子になってしまったことが恥ずかしかったのか、蓮華は下を向いて消え入りそうな声で言った。
「ああ転入生ですか。もしよかったら職員室まで案内しますよ」
男子生徒はそうゆうとにっこりと微笑んだ。
「本当?じゃあすみませんがお願いします」
「いえいえ。こっちです」
男子は再び優しく微笑んで、蓮華の前を歩き始めた。それに蓮華も続く。これで遅刻しなくて済むとホッとする蓮華。だが、この男子が口角を薄っすらと上げたことを彼女は知る由も無かった。その光景を遠くから見ていた人がいた。
「なんでここに女子がおるん」
疑問に思った人影は十分二人に距離をとって後をつけて行った。
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