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そして冒頭に戻る。 ま、案の定『意味がわかりません』って顔しかない。 橘君なんかは驚きと放心がまじって、凄い顔になってる。 「わからない事だらけでしょうから質問には出来るだけお答えします。 ですが、これは理事長のご意志、且つ決定事項ですのでその辺を心に刻んだ上、発言なさるように」 つまり、この子たちがどんなに喚いたところで意味はない。ってことだ。 下手したら退学にするよ? の意図も含め、俺は忠告とも脅しとも取れる発言をする。 「あ、あの!!」 「はい、なんでしょう」 いち早く放心状態から戻ってきたのは、目がクリクリとした、君ホントに男? と言いたくなるレベルの可愛らしい男子生徒。 「なんでいきなり君が総隊長に? 前任の隊長はどこにいったんです!?」 「前任の総隊長はご家庭の都合上、この学園に通うのが難しくなられ自主退学なさったそうです。 それと、僕は『君』という名前ではありません。鈴丘です」 目上の者に対する礼儀もそなわってないとはな。 最低限の常識をそなえてから俺に質問してほしいものだ。 「でもっ…………!!」 まだ何かしら言いたげな男子生徒を目で制す。 馬鹿に取り合うのはあまり好きじゃないんでね。 「次」 「はい」 今度は見惚れるくらい美人の男子生徒が挙手をした。 黒髪に、少し長めの前髪を左に流しているため左目が隠れている。 極めつけに右目には泣き黒子。 清楚の塊のような子だ。 なんだ、この学園の顔面偏差値。 「鈴丘律さん、と言ってましたが……鈴丘と言うとあの鈴丘グループの?」 「いいえ。僕はその鈴丘グループが管理している会社の社長息子ですよ。 名字がたまたま同じなだけです」 当然聞かれるであろう事に、あらかじめ用意していた答えを返す。 名字を偽っていったらどうだと唯に言われたが、俺は敢えてそうしなかった。 愛着があるしね。 「そうですか……」 俺の答えにやや気になる事でもあるのか、スッと目元を細めてから引き下がった。 今思い出したが、あいつは確か沢城財閥の嫡男、沢城翔一(サワシロ ショウイチ)だ。 沢城財閥はここ最近、勢いをつけてきた製薬会社。 キングも目を付けていて珍しかったからちょこっと調べた事があるんだった。 見目麗しく、頭もよし、会社の地位も申し分ない。 周りの令嬢が黙ってないだろうな。
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