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紗衣菜はゆっくりとしゃがみこみ静かに2つの小さな壺を抱きしめた。 その姿をみんなが静かに見守る。 紗衣菜はゆっくりと瞳を閉じて 「·····ごめんね。ずっと待たせて、来れなくて。」 「ずっと、待ってた。」 隣から聞こえた蓮兄の言葉はまるで悠斗に言われてるようで 「ゆう·····ごめん、約束なんてしなければ·····痛かったよね。」 周りから聞こえる鼻をすする音 「ゆい·····ごめんね。守ってあげられなくて·····怖かったよね、痛かったよね。·····ダメなママでごめんね。」 「ゆい、って名前だったのか?」 「うん。」 少し涙声の蓮斗に微笑んだ。 そして2人の骨壷に視線を戻し 「2人に守ってばっかりでごめんね。·····1人だけ生きててごめんっ。」 瞳から溢れ出した止めどなく零れ落ちる涙 紗衣菜は2人を力いっぱい抱きしめた。 小さな壺は人2人分なのにすっぽりと両腕に収まるぐらい小さすぎて 紗衣菜は零れそうになる嗚咽を耐えギュッと唇を噛みしめた。
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