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沈黙が重苦しい。
裕一の表情から、事態は良くないことを知った私は、ただ俯くことしかできなかった。
迎えにきたって…またいなくなるの?
今度は二度と会えなくなってしまうのだろうか…
何が起こるかわからない恐怖に、涙が出そうになる。
「社長…」
先に沈黙を破ったのは裕一だった。
社長なんだ…。
目の前に立っている男の人を、恐る恐る、もう一度見る。
あれ?
どっかで見たことがあるような気がする。
「あれ程、注意をしたはずだが?社長の命令でもきけないのか。」
穏やかではない口調に、私の思考は停止する。
「すみません。ですが…!」
「場所を変えたい。その時に、言い分を聞こう。ついてきなさい。」
そう言って男の人は歩き出し、裕一も続いて歩き出した。
いなくなる?
またいなくなる…
「ま…待ってください…私…」
緊張のあまり、しどろもどろになっている私の声を聞き、男の人は立ち止まった。
そしてゆっくりと振り返り、優しく微笑んだ。
「あなたも来るのですよ?」
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