12人が本棚に入れています
本棚に追加
裕一と、言われるままに車に乗り、着いた場所は、以前花見をした庭に桜がある屋敷だった。
屋敷の主がこの社長さんであることを知り、さらに緊張してしまう。
大きな門をくぐり、大きな部屋に通され、大きなソファーに腰掛けるように言われた。
なにもかもが初体験だ。
別世界というのは、まさにこのことなんだと思った。
社長さんは、ふっと息を吐き、裕一を見た。
「で、どういうつもりだ?」
「…彼女のことを真剣に愛しています。」
愛しているという言葉に、一気に顔が熱くなる。
「散々、釘を刺したはずだが?」
社長さんは先程より声を荒げて言った。
状況が飲み込めない私は、ただただ二人のやり取りを見守るしかなかった。
二人の仲を反対されていることは間違いなさそうで、不安がどんどん募っていく。
「どうなるか分かっているのか?クビにされたいのか!」
「どの様な処分も受ける覚悟です。何度も何度も諦めようとしました。…でもできなかった。
葵さんを必ず幸せにします。どうか、私たちのことをお許しください。」
裕一は深く頭を下げた。
裕一の気持ちで胸がいっぱいになって、涙が流れた。
「…交際を認めろと言いたいのか。」
「結婚を前提とした交際をです。…あなたの娘を私にください。」
最初のコメントを投稿しよう!