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「ちょっ………!あなた生きてますかっ!?」
沖田は慌てて少女に駆け寄った。
少女の頬がこころなしか赤くなっているのは恐らく沖田が踏んだせいだろう。
「大丈夫ですか!?起きてください!」
ぺちぺちと軽く頬を叩く。
「んー………?」
少女ーーー朔は薄く目を開けた。
「良かったー、あなた死んでるのかと思いましたよ」
ほっと息をついた沖田を朔は焦点の合わない目でぼーっと見つめた。
「ここ………どこ………?」
自分のおかれている状況を理解していない朔を沖田は少し心配するように眉をひそめた。
「ここは壬生浪士組の屯所前です。あなたはここに倒れてたんですよ」
「みぶろうしぐみ?」
回りきっていない舌で朔は問い返した。
「ええ、僕たち壬生浪士組は京の町を守っているんですよ」
沖田は答え、そして朔に質問する。
「あなたはどうしてこんな所で寝ていたんですか?家はどこなんですか?良ければ送っていきますよ」
その質問に朔は一気に顔を青ざめさせた。
「そうだ、私トラックに轢かれて………。でもなんで怪我してないの?」
「とらっく………?なんですか、それ」
沖田の疑問など聞こえていないかのように、朔は焦り始めた。
「そういえば、望はどこにいるの?望は大丈夫なの!?」
そして朔は沖田につんのめるように尋ねた。
「望が………!私の妹がいっしょに倒れていませんでしたか!?」
沖田は朔の質問には答えなかった。
厳しい目をして朔を見据えている。
「あなた………さっきからどうも不審ですね」
「え?」
「変な言葉を使うし、何よりその服が変だ」
朔は自分の服装を見た。
「変って………ただの制服ですよ?」
朔が着ている服はごく普通のセーラー服だ。
・・・・・
ごく普通の
ただ、それは彼女たちが生きていた“平成”と言う世界での話だということを、朔はまだ知らなかった。
「すみませんが、少し屯所までご同行お願いします」
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