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「縄をください」
今告げられたことが理解できないような顔をして座り込んでいる朔を尻目に、沖田は後ろに立っていた隊士に言った。
「は、はい!」
隊士は慌てて縄を差し出す。
沖田はそれを手に取ると、手荒に朔の両手を縛り出した。
「痛っ」
朔は苦痛に顔を歪める。
「乱暴な真似をしてすみません。ですがこれも我々の職務でしてね」
非情な声に顔をあげると、そこには笑顔の沖田がいた。
――――怖い
朔はぞっと背筋が寒くなるような気がした。
(この人………目が笑ってない)
沖田は後ろ手に縛られた朔を見て笑顔でこう言った。
「先に言っておきますが、逃げようなんて思わないでくださいね。不審な真似をしたら斬ります」
そして無理やり引っ張り、朔を立たせる。
かなり乱暴なやり方だったが、朔は沖田に何も言わなかった。
朔の本能がこの人には逆らってはいけないと告げていた。
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