月の光に導かれ

6/13
前へ
/21ページ
次へ
沖田に引きずられるまま、朔は壬生浪士組の門をくぐった。 沖田はそのまま誰かの部屋へと向かう。 「沖田です。巡察中不審な女を発見したので、つれてきました」 「入れ」 部屋の中には眉間にしわを寄せ、不機嫌そうな顔をした男が座っている。 不機嫌そうではあるが、涼しげな整った顔をしている。 「総司、ご苦労だった。で、なんでこの女をつれてきた?」 目の前の男が沖田に問う。 沖田はへらっと笑いながら答えた。 「屯所の前に寝てたんです、この人。それに聞いたことない言葉を話すし、服も変です」 「お前は異人なのか?」 男の質問の矛先が朔に変えられた。 朔はすっかり萎縮してしまい、その質問に答えられなかった。 そんな朔を見て、男はチッと舌打ちをした。 そして次の瞬間、朔の喉元には銀色に鈍く光る刀があった。 「お前は間者なのか?正直に話せ、嘘をつけば命はないと思え」 え、これはどういうこと?? 初めて見る日本刀に朔の思考回路はストップした。 「さすが鬼の副長土方さん。女にも容赦ありませんねー」 横の方で沖田がへらへらっと笑う声が聞こえる。 朔はその刀を見て、自分の身に何かが起こっていることを知った。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加