見えない月が昇る頃

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「ごめんごめん」 そう言った望の髪はまだ寝癖がついている。 「まだ寝癖ついてるよ」 望のサラサラの髪を手ですく。 薄い茶色で緩くウェーブのかかった髪。 それに対して、私の髪はまっすぐで野暮ったい黒。 私たちは双子なのに、全てが正反対だ。 昔から望が羨ましくて仕方なかった。 きれいな髪、可愛らしい容姿、明るい性格。 望の周りにはいつも人が絶えなかった。 人見知りだった私は、いつも望を羨ましく見ていた。 “望” その名が表すように、望はまるで満月のような人だ。 みんなに愛でられ、明るく夜を照らす満月。 それに対し私の名は “朔” 昼間に昇り、太陽の光にくすみ、誰にも気づかれることはない。 名は体を表す。 昔の人はよく言ったもんだ。
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