エピローグ.終わりの始まり

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所々から不気味な光を漏らし、中心地を照らす高い塔。 かつての知能を失い、異形の怪物と化した生物たち。 そして、 鳴り響く、鐘の音。 「故に授かった二つ名は、『藍の鐘楼』……」 「【嘆ク山】(トキシック=ベル)」 ガラーン、ガラーンと。 高らかに、おごそかに。ゆったりと、ゆっくりと。美しく、おぞましく。 塔から発せられ、幾度も空を叩く鐘の音は、市内の全ての人に届いた。 学園で一時間目の授業を受けていた生徒たちにも。 校内を徘徊していた右京にも。植木の手入れをしていたラムダたちにも。時音の行方を各地に問い合わせていた理事長にも。 自分の部屋にとじ込もっているマオにも。彼の中にいる奈緒にも。 中心街のビルの地下深くで、敵と相対していた優にも。 市内に入ってすぐ、突如として現れた植物に退路を絶たれ、困惑していた葛西親子にも。 自身の邸宅で、分家当主たちを待っていたユーリにも。 魔法陣の外にあり、無事だった全ての者が、程度の差こそあれ、感じていた。訳も分からぬままに突きつけられていた。 それまで自分たちが過ごしていた"世界"が、終わってしまった絶望を。
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