エピローグ.終わりの始まり

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魔法陣の内側が、明るくも暗い藍色の光に包まれた。 「その魔術が開発されたのは、今からわずか数十年前……魔流毒の危険性が認知されたばかりの頃です」 「魔流毒による"変異"に着目した一人の研究者が、そこに様々な術式を加え、兵器として運用する手法を立案したのです」 範囲内の建物が、タナトスが立つオフィスビルへ吸い込まれる。 地面を揺るがしながら集結した、大小様々な建造物は、しっちゃかめっちゃかに分断されては接着し、歪な塔を形成していく。 「発動と同時に、一帯に多量の魔流毒を散布。動植物を"変異"させつつ、周囲の物体をかき集め、術式安定用の塔を建造します」 「魔流毒は生体に吸収されるので、広範囲への拡散や残留はありませんが……この術には、それ以上に厄介な特性があります」 地鳴りに混じって響き渡るのは、生物の絶叫。 人間や魔族だけではない。野良犬やカラスなどの動物まで、自分のものでなくなる体に、恐怖と苦痛の叫びを撒き散らす。 「この魔術によって"変異"した者は、魔流毒に仕込まれた術式の影響で、術者の簡単な命令に従ってしまうのです」 「すなわち、これは……死をも恐れぬ軍勢を生むための、兵器」 やがて、しんと静まり返る街に残されたのは。
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