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ぱしゃ、と水が跳ねる音がしたのはその時だった。 少女は、虚ろな瞳のまま音の方を見る。そこには、一人の少年がいた。 歳は一七、八くらいだろうか。軍服のような服装の少年は、服の袖とズボンの裾をまくり上げ、裸足で小川の中を歩いている。 少女は、それをただ眺める。少年の姿に、さらに寂しそうな表情を強めてしまう。 そんな彼女の視線に気が付いたのか、少年は立ち止まり彼女を見た。 可哀想という哀れみの視線を向けられると思った少女は、無意識に構えてしまう。普段、出先でそういった視線を向けられることがあったからだ。彼女はそれが嫌で仕方がなかった。 しかし、少年は彼女に笑顔を向けてきた。優しそうな笑顔だった。 「先客がいたか」 そう呟くと、少年は少女に近付いてくる。 「君一人?」 そうしながら、少女に問いかける。 その問いに、少女は小さく首を振った。 「向こうに……家族が……」 そう言って、小川と反対側を指さす。 「そうか」 その方向をちらと見ると、少年は少女の隣に座る。 「ちょうどよかったよ。話し相手が欲しいと思っていたから」
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