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「……え」 「話し相手になってくれるかい?」 戸惑う少女に、少年は問いかける。 何処か不安げな表情を浮かべながらも、少女は小さく頷く。 「ありがとう」 少年はそう言うと、目の前の小川に視線を向けた。 「……ここはいい所だよね。緑が多いし、小川も流れてるし、空気も美味しい。それに」 そこで言葉を切った少年は、今度は空を見上げた。 「空が綺麗に見える」 「……空」 少女も空を見上げる。深く澄んだ空に、小さな白い雲がいくつも浮かんでいた。 その空は、確かに綺麗だった。 「俺はね、空が好きなんだ」 少年はさらに続ける。 「小さい頃から空が好きで、空に憧れていた。……もしかしたら、空に手が届くかもしれない。そう思って、本気で手を空に向けて伸ばしていたくらい」 わたしと一緒だ。少女はそう思った。 少女も、空に手が届くかもしれないと本気で思っていた。それが今の自分の状態になるきっかけとなったが。 「成長するに連れて、この空を飛び回りたいと思うようになった。自由気ままに飛ぶ鳥のようにね。だから俺は、パイロットになろうと思った」 「……パイロット?」 「そう、パイロット。結果的に、パイロットにはなれた。……でも、思っていたモノはほとんどなかった。綺麗な青色に見えた空は、赤黒く染まっていた。爽快だと思っていた感覚は、絶望と血生臭さが混じった気持ち悪さだった」
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