俺の日常の中でもちょっと特殊だった一日

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村上の母親に連れられて 彼の部屋に向かって階段を登る。 「いや~貴樹にこんなカッコいい友達がいたなんてね~」 「いや~そんな事ないですよ~!」 友達じゃない。 そもそも俺は顔すら知らない。 「もうあの子ったら~ 部屋に籠って出てこないんですよ~?」 「そうなんですか~」 なぜ無理矢理でも外に出さない? うちの家だったら扉ぶっ壊してでも引きずり出されて話を聞かれるだろう。 言いようのないイライラが胸を襲う。 母親が階段を登った所で立ち止まった。 危うくぶつかりそうになったが、 足の筋肉フル活用で堪えた。 「貴樹~!お友達が来たわよ~!」 と、ドアを叩きながら母親は言う。 ……が返事がない。ただの屍のようだ。 「あっ、僕に任せて下さい。 あの……恥ずかしいんで下に降りてて貰っていいですか?」 と、俺は母親に頼んだ。 母親は笑顔で 「あっ……はい~」 とニコニコしながら俺に返事して、 階段を降りて行った。 ……さて…… ドアノブをガチャガチャする。 ……が、当然鍵は空いていない。 「村上く~ん? 生徒会副会長の山口 優樹で~す。 ちょっと開けて~?」 ……返事がない。 返事がないとまず会話ができない。 会話ができないと説得なんて不可能だ。 さてどうしたものか……
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