俺の日常の中でもちょっと特殊だった一日

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・ ・ ・ 騒がれたら面倒だ。 俺はポケットのハンカチを 村上の口の中に突っ込んで声を出せないようにして、前髪を掴んで俺の方を見させた。 ・ ・ ・ 「「「慣れてる!?この人慣れてるよ!?」」」 ・ ・ ・ 「おいお前。自分がこの世で一番不幸だとか、社会がクズだとかそんな事思ってるだろ?」 俺は村上の目を見て言った。 村上は顔を背けた。 「こっち見ろ!!」 俺は髪の毛を強く引っ張り、 村上の目を俺と合わさせた。 ・ ・ ・ 「「「現役だ!この人充分に現役だよ!?」」」 ・ ・ ・ 村上は怯えていた。 しかしどうにもならないとわかったのか、 俺の目を見たまま頷いた。 「お前はよくしてくれる奴と、 別に関わりのない他人。 どちらかを助けるとしたらどっちを助ける?」 当然ながら村上は答えられない。 しかし結果は決まっているので、 俺は話を続ける。 「よくしてくれる奴助けるよな?」 村上が頷いた。 そりゃそうだ。 それがこの世の道理だ。 だからこそ間違ってる。 社会に見捨てられたなんて…… ……俺と同じ間違えしてやがる。 「それと同じだ。 社会に対してなにもしてない奴が…… 社会に助けて貰えるなんて 甘いこと考えてんじゃねぇぞ!!?」 ≪ゴンッ!!≫ 俺は村上に頭突きを食らわした。 村上は白目を向いて気絶しかけたが、 俺は髪の毛を引っ張ってそれを許さなかった。 「お前の話を聞いてやる。 言いたいことがあるなら言え」 俺は村上の口に詰めた ハンカチを取ってやった。 村上は震えながら…… 「特にないです……」 ……と答えた。 俺はそんな村上の肩に手を乗せ、 しゃがみ込み、村上と同じ目線で 村上に笑いかける。 「なにもなかったら逃げねぇだろ? ……大丈夫。他の奴にバレたくないなら、 俺は誰にも言わないから。 ……一人で抱え込むのは辛いだろ?」 村上は泣き始めた。 .
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