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「あ~、うるせぇと思ったら
山口家のおふたりさんか……」
カーテンで仕切られたベットの
カーテンがシャーと空く。
目をこすりながら顔を出したのは、
お馴染みの野球小僧(?)の龍だった。
「なんだ龍か。いたのか」
「ちょっと腹が痛くてね」
「本当は?」
「サボりです」
素直でよろしい。
しかしこのままじゃコイツ、
本当に卒業できないぞ?
そんな俺の心配を物ともせず、
龍は呑気に伸びをしている。
一発ブン殴ってやった方がいいかもしれない。
「龍くんは授業についていけなくなったらすぐにここにくるんだよ~?」
「なるほど、毎日か」
真琴の鋭い言葉に
龍は胸を突き刺されたようで
「グフッ」とか言っていたが、
すぐに真琴の言葉など聞いていないかのように、信也のお母さんに笑いかけた。
「いいじゃんオッサン。
昔っからの仲じゃな~い?」
「だからこそ、君の進級が心配なのだが?」
「あっ、そこ痛い。治療して?」
「処方箋は問題集……っと」
「大丈夫。元気になった」
ふたりはどうやら本当に気がしれた関係のようで軽口を叩き合っている。
しかしだな……
「おい龍。流石に気の知った相手とはいえ、
女性にオッサンはねぇだろ?」
俺は龍を咎めた。
親しき中にも礼儀ありってやつだ。
しかし龍は逆に驚いた表情をしていた。
「あれ?信也から聞いてねぇの?
この人信也の『お父さん』だぞ?」
…………はい?
「お父さん『代わり』って事か?」
「いや、ちゃんとついてる」
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