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「あっ、そうだ。……ハイ」
食事を終え、家に帰ろうとする美咲を見送るために玄関まで着いて行ったら、美咲からバレンタインデーのプレゼントであろう小包みを差し出された。
「……チョコレート?」
「うんん、クッキー」
「流石っす。……ありがとな?」
それをお礼を言いながら受け取る。
美咲は「えへへ…」と恥ずかしそうにしている。
……さてと、
「なぁ美咲……」
「あっ、エリナと以下同文で」
俺の言おうとした事を察したのだろう美咲は
俺の言葉を遮るように言った。
美咲はエリナがなんと言ったのか
なんとなくだがわかっているのだろう。
よくお互いを理解している。
「あと付け加えるとしたら、
フられても私、欲しいものが手に入らない事に慣れてるから大丈夫だよ?」
「悲しい事言うな……泣きそうになる」
美咲は「アハハっ…」と笑い、
指を折って数え始める。
「お父さんに……まぁ私の心変わりが原因とはいえ真琴に……ヴィ○ンのバックに……」
「最初ふたつの重さに対して
三つ目の軽さ半端ねぇ……
いや、○ィトンのバックは素晴らしいよ?
俺が言いたいのはその……」
と俺が誰かに弁解しているのを見て、
美咲はまた「アハハっ…」と笑う。
「でも……そんな私でも優樹が
縋り付いてでも手に入れたいと思ったから、フられてもまたチャレンジしてるんだよ?」
美咲はそう言って、
すぐにドアから出て行った。
ドアの隙間から最後に見えた美咲の頬は恥ずかしさからか少し紅潮していた。
そして俺は玄関で独りになった。
「……反則だろ」
俺は冷たい手の甲を頬に押し当てた。
熱い頬が冷やされて調度よかった。
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