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iPh◯neを弄りながら、心から軽蔑するような視線を俺たちに向ける幸村。
その後ろから瑠奈もやって来た。
さて、どう切り抜ける?
「あなたなにを言ってるの?
て言うか誰ですか?」
白を切り通すために女口調で話す
真琴ことなっちゃん。
俺もそれに便乗する事に。
「そうですよ。私たちはさっきまで私の元カレの話してて物凄く殺したくなったので揉めてただけですよ?」
俺の言い訳を聞いた真琴が
なぜかこちらを見て軽く睨んで来た。
『おい馬鹿。状況を事細かに説明した上で弁解したら、ほぼ肯定だろうが』
『……すまん』
俺はどうも修羅場を
くぐり抜ける能力が皆無らしい……
ごめんなさい……
「アレ?真琴のお母さん?」
瑠奈がなっちゃんを見て首を傾げた。
ほら真琴。お前も母さんそっくりに化けるから瑠奈に疑問持たれちまってるじゃねーか。
しかしなっちゃんは動じなかった。
「?……人違いじゃないですか?
そもそも私高校生ですよ?」
「あっ、すみません……
声も違うし人違いだと思います」
うまい。
母さんが大学生だと(下手したら高校生だと)言ってもバレないような容姿なのを当然知らない風に装ってかつ、声が違う事で相手に他人だと思わせた。
さらに事実を知っている俺でさえ本当に疑問に思ってるんじゃないかと思わせるような演技。
完璧だ。
「この人たち詩織ちゃんの友だちなの?
真琴のお母さんそっくりでびっくりした!」
純粋な瑠奈はうまく騙せたようだ。
そもそも目の前にいるのが俺たちだなんて一切考えていない様子だ。
「いや~人違いだと思いますよ?
正直、会った記憶がないです。
……でも~、ちょっと居づらく
なっちゃったんですみませんけど
帰ります~すみません」
真琴は幸村が余計な事を言う前に
瑠奈に説明だけして、
本当に申し訳なさそうに謝ってから
カバンを持ってiP◯oneを弄る幸村を除け、
「こちらこそすみません……」と謝る瑠奈に
一礼してその場を去ろうとした。
俺も同じようにして真琴の後を追った。
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