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「……ごめん」
ひとしきり……いや、全部だろうな
カニをゴミ箱に逃がしたあと、
幸村は珍しく反省している様子だ。
俺も確かに少し落ち込んだけど、
俺は幸村にこんな顔をして欲しかったわけではない。
俺はすぐに気楽な態度をとった。
「気にすんなって!
それよりこれ食う?」
俺は自分のカニを指差した。
さっきのとは比べものにならない
安物だけど、俺は幸村にカニの味を
覚えていてもらいたい。
……まぁ完全な偽善だな。
「……いいわよ……気にしなくて」
「実は俺、カニ苦手なんだ。
むしろ頼む!食ってくれ!」
俺は拝みながら幸村に頼んだ。
幸村は「そこまで言うなら……」と
俺からカニの乗った皿を受け取った。
そして幸村はゆっくりと皿からカニの足を
一本だけ持ち上げ咀嚼した。
「……美味しい……
……さっきのよりずっと……」
いや、お値段1/10の1980円の
そこそこ安物のカニだから
さっきの奴の方が絶対美味しいんだけどな。
味わって食べてるからかな?
……でもまぁ、よかった。
「そう言って貰えたら
用意した甲斐があるよ」
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