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「優樹も食べてみたら?」
と幸村は俺にカニを差し出した。
「いや、だから俺、苦手なんだって」
まぁ嘘なんだが。
でも一度嘘を言った手前
今さら撤回して受け取るわけにもいかない。
しかし幸村は諦める様子を見せなかった。
「いいから食べてみなって」
それどころかカニを
俺の顔の前まで差し出してきた。
これは……『あ~ん』なのか……?
魅力的な提案だが俺の鋼の心は
全く揺れ動かない。
俺はそのまま『あ~ん』を受け入れ
カニを咀嚼した。
……あれ?意思に反して体が勝手に……
すみません嘘です耐えられませんでした。
「どう?」
俺が咀嚼する様子を
幸村はじっと見つめる。
味か……?
ん?あれ?なんていうか……
「カニってこんな美味しかったんだ……」
今まで食ったカニの中で
一番美味しく感じた……
「でしょ?」
幸村はフッと笑い、
カニを半分皿に乗せて俺に返した。
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