幼なじみは近くて遠くにいるという

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なんだかんだと押し切られて服屋ナウ。 美咲は俺に似合いそうという服を見繕ってくれるのだが……正直ビビッとこない。 「このコートなんてどう?」 そう言って美咲が指差したのは、 グレーのダッフルコート。 しかしこれもビビッと来ない。 ついでいうと今はトレンチコートの気分。 ダッフルじゃないのよ。 というわけで俺は美咲を放っておいてトレンチコートを探し回る。 「こ……これは……」 ……そして運命の出会いを果たす。 数々のコートに埋れていた 掘り出し物の一品。 黒地に縦に2本の星のライン。 そのラインは前面の裾から肩まで続き、背中に折り返し、また肩から背中てと続く。 ラインの星は上から赤、橙、黄、緑、青、欄、紫と虹と同じ色で描かれている。 そして最後のポイントとして背中のスペースに白色で大きな星。 ……これをオシャレと言わずなんと言う!? 「きたこれ!」 「ん?どれどれ~」 美咲がコートを持つ俺の元に駆け寄り、 俺のコート持っているコートを覗き込む。 「…………えっ?」 感動でギョッとした様子の美咲。 どうよ?見直したか? 「……これは……ネタ?」 「いや、本気」 なんだその言い方は? 「いやいやいや!ダメだよ!?絶対! だいたいトレンチコートにこんなに自己主張しまくってるガラなんて絶対にあり得ない!そもそもトレンチコートにガラは必要ない!」 「いやいや、だから新しいんじゃん?」 こいつはオシャレというものをわかってないな。 「いやいや!絶対にこんなのにお金書けない方がいいって!」 「大丈夫大丈夫。見ろ。 定価1万2000円の70%引き……3600円だ! これはもう神が俺にこれを買えって言ってるよ」 「いや違う!これはメーカーが血迷って勢いで意味のわからない物出しちゃったやつだよ!黒歴史だよ!この値段は全く売れなかった証拠だよ!」 「すみませ~ん!これくださ~い!」 「あぁっ!?レジに持って行っちゃってる!?」 美咲につきあっていたらいつまで経っても買えないのでレジに持って行って購入。 ……いい買い物をした。 「店員さん。このコートの時代来ますかね?」 「……さぁ~?(笑) いつか来るんじゃないですか?(笑)」 ……ほら、店員さん笑顔で言ってるぞ? .
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