幼なじみは近くて遠くにいるという

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「さて、じゃあそろそろお前の用事しに行く?」 食事と駄弁りもそこそこにして、 俺は美咲に切り出した。 「あ~っ、うん。そうだね」 「つーか何買いに来たの?」 考えてみたら聞いてない。 今まで服を買ったりしてて忘れてたけど。 「まずは望遠鏡のレンズ。 ……ほら、子どもの時に優樹に貰った望遠鏡。あれのレンズ割っちゃって」 「……あげたっけ?」 覚えがない。 しかし望遠鏡を持ってたのは覚えている。 フリーマーケットで売ろうとして探しまわったけど見つからなかったから。 ……あれ?そういえばあげた気が…… 「覚えてないんだ……」 尻つぼみに小さくなっていく声。 どこかに哀愁を漂わせながら美咲は呟いた。 「あっ!そういえばあげたね! 思い出した思い出した!」 本当は覚えなんかない。 でも……美咲が寂しそうだったから…… 「いいのいいの。幼稚園の時の事だし。 忘れてても仕方ないよ」 俺のとってつけた嘘も 美咲には通用しなかったらしい。 「……ごめん」 「いいから。……じゃ、行こ?」 俺は美咲に連れられて 百貨店の5階の文具、遊具売り場に向った。 .
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