幼なじみは近くて遠くにいるという

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「じゃあ『目標』は何かな?」 再び美咲のお父さんは 俺たちふたりに問いかけた。 「「お父さんとお母さんに楽させてあげたい」 「……やっべ、涙出てきた」 なぜか上を向いて天を仰ぐ美咲のお父さん。 その目には申告どうり涙。 ……普通のこと言っただけなのになぜ泣く? 美咲のお父さんが泣いているその間、俺たち兄弟は自分の目標について語り合っていた。 「やっぱり家族みんな揃ってがいいもんね?」 俺がそう聞くと真琴は頷いた。 「うん。そのためにも俺は、義務教育が終わったらさっさとバイトでも探すつもり。んで、バイト代を家計の足しにしながら働いて、あわよくば正社員にしてもらうっていったところかな?」 「あーっ、わかる。さっさとバイトしちまいたいよな?」 どうでもいい補足をすると これは6歳児の会話である。 そんな年齢よりも高い水準の話をしていた俺たちの会話を美咲のお父さんはどことなく真剣に聞いていた。 「……ねぇ?」 「「ん?なに?」」 同時に聞き返す。 「学校にちゃんと通う気ないの?」 やんわりとした、でもどこか真剣みを帯びた質問だった。 その質問に俺たちは顔を見合わせた。 そして何気なく答える。 「そりゃ……ねっ?」 「父さんたちに苦しい思いさせておきながら自分達はヘラヘラと学校通うような事はしたくないですし」 美咲のお父さんは呆れたように 「ふぅ~」とため息をつきながら、 俺たちふたりの頭を撫でた。
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