幼なじみは近くて遠くにいるという

18/29
前へ
/714ページ
次へ
「はいはい。大人ぶるのはやめなさい」 「「……はぁっ?」」 俺たちはちょっと怒り気味だった。 そりゃそうだ。自分たちの目標を否定されたんだから。 「……なんなんですか? あんたに文句言われる筋合いないと思うんですけど?」 真琴が美咲のお父さんを睨みつけながら言う。 小学生とは思えないレベルの殺気と狂気と威圧感をガンガンに醸し出している。 しかし美咲のお父さんは全く動じなかった。 「子どもの仕事は学校に行くことだよ?」 俺たちは首をかしげた。 いや、家族のために金稼ぐ方がエラいだろ? ……って感じだ。 「君たちのお父さんとお母さんが頑張って働いているのは君たちを学校に通わせてあげたいと思ってるからだよ?」 「いや、そんなの……」 別に学校なんかどうでもいいのに…… 「それがさっき言ってた、お父さんとお母さんの『目標』なんだ」 「「…………えっ?」」 「最悪の場合、君たちを見捨てて楽することだってできるんだよ?」 「「…………」」 俺たちは黙りこんだ。 捨てられるのを想像したから。 ……恐かったから。 「でもそれをしないのはお父さんとお母さんが君たちのことが大好きだからなんだよ?」 「「…………」」 「お父さんとお母さんの『目標』……『夢』は子どもが立派になることなんだよ? ……だから君たちはいっぱい遊んで、いっぱい勉強して、立派な大人にならないとね?」 そう言って美咲のお父さんは俺たちの頭を撫でた。むず痒いながらも、俺たちはそれを受け入れた。
/714ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7526人が本棚に入れています
本棚に追加