幼なじみは近くて遠くにいるという

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・ ・ ・ その日が俺たちにとって、 最後に美咲のお父さんと話した日になった。 3日後、久しぶりの家族全員が休日の日だったので、家族みんなで昼食を食べていたら美咲のお母さんが家を訪ねて来た。 そして父さんと母さんに美咲のお父さんが亡くなった事を告げた。不幸な偶然が重なった結果の急な脳出血による死だった。 母さんは泣き、父さんは母さんを抱きしめ無言で慰めた。 真琴は 「……そっか……セミが死ぬのなんかとは全然違うんだな……」 なんて言いながら普通の表情のまま涙を流していた。自分で泣いていることに気づいていないようだった。 俺はまだ死についてあまり考えた事が無かったからよくわからなかった。 子どもの残酷な無邪気ゆえに父さんに 「美咲のお父さん死んじゃったの?死んじゃったらどうなるの?」 ……なんていうことを聞いた。 父さんは母さんを抱きしめながら、 「遠くに行くって事だよ。もう二度と会えないくらいに遠くに……」 ……と答えた。 俺はそれを聞いて、 「どれくらい遠いの?」なんて質問した。 すると父さんは窓の外を指差し、 「あの星くらいかな?」と答えて、 俺の頭に手を乗せて優しく撫でた。 その優しさが、 俺を慰めようとしているのだと理解した時、 俺は恐くなって大泣きした。 ・ ・ ・ お通夜の日、美咲のお父さんが亡くなってから始めて美咲を見た。 美咲は俺と同じで『死ぬ』っていうことがよくわからなかったようで、お母さんに『お父さんは疲れ過ぎて、眠ったまま起きれなくなっちゃたからもう会えない』という風に教えられたらしく、必死でお父さんを起こそうとしていた。 涙を流しながら…… 冷たくなった体をゆっくりと揺らして…… ・ ・ ・
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