幼なじみは近くて遠くにいるという

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話しながらの帰り道はそれはそれは短い。 あっという間に俺たちの家の前に着いてしまった。 ちなみに俺たちの家はマンションの隣どうしだ。 「じゃあね。今日はありがと」 家の扉の前で美咲は軽く手を上げて言った。 「いやいや、俺も楽しかったよ。 ……あっ、明日美咲んちにお線香あげに行くから」 「うん。わかった」 この時、俺はドアに手をかけていた。 でもまだまだ話が盛り上がりそうな気配がしたのでその手を放した。 美咲もそれに気づいたのか、 同じようにドアノブから手を放して俺と正面を向き合った。 「あっ、そういえば私の幼なじみの友だちモードは今日だけで終わりの予定だから。明日からは一人の異性として落としにかかるから」 「……個人的にはずっとこのままでいて欲しいんですけど」 「残念。こっちは優樹に惚れ込んでるんで」 そう言ってニシシと笑う美咲。 そんな美咲に俺はある質問をぶつけた。 「っていうかさ、美咲って昔は真琴だったよな?……どうして俺に?」 俺の質問を聞いた美咲は、 上を向いて「あ~っ……」としばらく何かを考え込んだ。 そして突然持っていた何かが入ったビニール袋を俺に投げつけた。 「うおっ!?」 突然の事で、 俺は情けなく尻もちを着いてしまう。 その間に美咲は扉を開けてその影に隠れた。 そして質問に答える。 「自分で考えなさ~い」 そう言った後、 扉の陰から顔だけ出して…… 「バ~~~~カ♪」 ……と笑顔。 とびっきりの笑顔で言って、 扉を≪パタン!≫閉めた。 ちょっとばかし急な出来事だったので、 俺は呆然としていた。 不意に投げつけられたビニール袋が気になったので中を開けてみると一緒に行った百貨店で買ったのであろうクッキーの詰め合わせが入っていた。 ……お礼といったところだろうか? ……可愛いとこあんじゃん……
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