幼なじみは近くて遠くにいるという

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「つーか兄貴はひとりで出かけてたのか? …………お年玉をドブに捨てに」 こいつは本当に失礼だな! 「ちげーよ。美咲につきあってたの」 「あぁ、高木さんか。 なに?無理矢理連れて行かれた?」 今の真琴と美咲は凄まじい犬猿の仲だ。 もはやお互い嫌い合ってる。 昔は仲良かったのに…… ……とは言ってはいけない。 ふたりとも本気で機嫌が悪くなる。 「ちげーよ」 「秘密でも握られたか?そろそろお前が隠してるトイレのタンクの中のエロ本もバレてもしょうがない頃か……」 「ちげーよ!つーか気づいてたの!?」 コイツ恐い…… あと俺のなにを知ってるんだろう…… 「じゃあ兄貴が女遊びに目覚めたか?」 「ホントなんつーこと言うんだ…… ちげーよ。明日、美咲のお父さんの命日なんだよ。だからそのお手伝い」 まぁ、服買いに行ったり、昼飯くったり、望遠鏡のレンズ買いに行ったりしたけど半分合ってるよな? 「…………あぁ、そうか……明日か……」 真琴も俺と同じ様子だった。 きっと忘れてしまっていたのが申し訳なくて、そんな自分が許せないんだろう。 「ミスったな……サーセン高木さん。 ……よしお詫びは終了。 ……さて、そろそろ勉強でもするか」 真琴は表情、態度には出さないが沈んだ様子でリビングから出て行った。 ……なんかうまくいかねーな…… 俺は気分転換にベランダに出た。 ベランダから見える景色は冬特有の日暮れの早さから、もう真っ暗に染まりかけていて、空には最近では珍しくいくつかの星が輝いていた。
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