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鳥居彩子博士は、ふと、鳥の羽根を拾う手を止めた。
島の何処かに騒がしさを感じたのだ。
鳥たちの喧騒とは違った五月蝿さだ。
人間特有の煩わしさ。
博士にとって、それはとても久しぶりの感覚だった。
十年前にこの島へと移って以来、そうした人間臭さは常に排除してきたのだ。
桜と、鳥……。
それが長い間、私と、この島の全てだった。
それが、私の城、聖域だった。
それが、
今、聖域は決壊した。
凡人たちの上陸により、この島は私と鳥たちだけのものではなくなった。
ある南洋諸島の孤島に、マゼランが上陸したことにより、ドードー鳥が絶滅したように……。
間もなく、この島に惨劇が起きる。
しかし、それは仕方のないことだ。
何故なら……。
「ママー、ママー」
私を呼ぶ声が聞こえた。
「ごめんなさい。ママはもう行かないとなの」
そう言うと博士は、部屋を出てその部屋をロックした。
ガチャンと中で閂が降りる音がして、部屋は封印された。
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