3、鳥類館と鳥居博士

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鳥居彩子博士は、ふと、鳥の羽根を拾う手を止めた。 島の何処かに騒がしさを感じたのだ。 鳥たちの喧騒とは違った五月蝿さだ。 人間特有の煩わしさ。 博士にとって、それはとても久しぶりの感覚だった。 十年前にこの島へと移って以来、そうした人間臭さは常に排除してきたのだ。 桜と、鳥……。 それが長い間、私と、この島の全てだった。 それが、私の城、聖域だった。 それが、 今、聖域は決壊した。 凡人たちの上陸により、この島は私と鳥たちだけのものではなくなった。 ある南洋諸島の孤島に、マゼランが上陸したことにより、ドードー鳥が絶滅したように……。 間もなく、この島に惨劇が起きる。 しかし、それは仕方のないことだ。 何故なら……。 「ママー、ママー」 私を呼ぶ声が聞こえた。 「ごめんなさい。ママはもう行かないとなの」 そう言うと博士は、部屋を出てその部屋をロックした。 ガチャンと中で閂が降りる音がして、部屋は封印された。
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