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私は探偵の姿を見つめた。
探偵は大きな荷物を引き摺ってユラユラと歩いている。
島を見つめるその顔は蒼白で、島に来てしまったことを悔いているかのようだ。
いったい探偵と博士の間には何があったんだろう?
私はそのコトを考えると何とも不安な気持ちになった。
高いところに登って時に、誰かに梯子を取られてしまったような不安感だ。
この島に私が来たことは間違いだったのではないか……。
船着き場からは、一本の道が真っ直ぐ伸びていた。
桜の道だ。
石畳の上に桜の花びらが何層にも積み重なって、桃色の絨毯になっているのだ。
私たちはその道を言葉もなく歩き出した。
桜の絨毯は、グニャリと気持ちの悪い感触を足に残した。
少し歩くと、道の真ん中に一人の少女がたたずんでいるのが目に入った。
「お待ちいたしておりました。私の島へようこそ」
少女は私たちに笑いかけた。
少女の髪はエメラルドグリーンに輝いていた。
桜の強烈な桃色と少女の髪の色とで、私は極彩色の地獄へと招かれたような気がした。
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