1、探偵と琴美

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私、定禅寺琴美(じょうぜんじ・ことみ)は痛む頭を押さえてソファーに転がっていた。 窓から差し込む朝の日差しが、これ以上ないってくらい鬱陶しい。 まるで身体中が酢で漬けられたようだ。 症状、二日酔い。原因、失恋。 全くありふれた話だ。テンプレートのようなマンネリな行動。 でも、私にとっては大事な恋だったのだ。 酒を煽って何が悪い!! そう富士山にでも、チョモランマにでも向かって思い切り叫びたい。 しかし 「ぎもぢわるい……」 私は力なく呟いた。 駄目だ。 思考回路はショート寸前、月の光に導かれ、許容量を越える飲酒をしてしまったようだ。 って、セーラームーンか私は……。 うわ、痛い。痛すぎることを言ってしまった……。 まだ私の頭はアルコールの支配下にあるようだ。 私は痛む頭をポカリと殴ってソファーに顔をうずめた。 「コトちゃーん、ほら朝だよ。さっ、太陽の光でも浴びて元気だして」 朝にしてはテンションの高すぎる声が聞こえて、朝の閃光が目に飛び込んできた。 カーテンが開けられたのだ。 ま、眩しい……。 私は手を持ち上げて目を覆った。
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