春めぐり

2/2

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
桜も終わり、街路樹にはハナミズキの花が咲いている。 つい半月前までは、寒い寒いと言っていたのに、昨日は汗ばむような暑さだった。季節は時の刻みととともに、うつろいでいる。ボーとしているのは僕だけだろうか。昨日は娘と半年ぶりに会った。目標に向かって、頑張っている姿は春から初夏の生き生きとした季節のように初々しく、まぶしく映る。何も聞かずとも顔つきを見れば、十分に伝わってくるオーラを感じたのだ。娘から力と安心感をもらってしまい、父親として、娘には美味しい食事をごちそうするくらいしかできない。少しずつ、1人歩きへと向かう娘。父親は見守ることしかできない。夢が散らずに花開けと祈ることしかできない。帰り道、心配するだけで、何もできない父親に『お父さん、お腹出過ぎだよ。かっこいいお父さんでいないと結婚式に呼ばないからね』と言われてしまった。 『ああ』そんな日が来る時も迎えているのか。愕然としながらも、出っ張ったお腹でバージンロードを歩かないように準備をしておかなくてはと、複雑な気持ちで娘と別れた。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加