プロローグ

3/12
前へ
/51ページ
次へ
「光輝ぃ、うちは貧乏なの。我が儘言わないで」 養育費。せめて養育費だけでもあの男に払わせようか。いや、もう二度と顔も見たくない。 お金が欲しい。空から一兆円が束になって降ってきたら、私は働くことをやめる。そして、一人でゆっくりと暮らしていたい。子供という邪魔なものは消して、一人でいたい。 「光輝。いい加減にしな」 娘が息子の頭を小突いた。 「うああぁん」 泣き出す息子の声に苛立った。隣の壁は薄いため、隣人にもその声は聞こえている。きっと隣人にも苛立ちでしかないんだろうな。それもそうだ。他人なんだから。 苛つく。本当にイラつく。殺してしまいたい。 ――この子たちをお金に変えてしまおうか。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加