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私はお母さんに愛されていない。
私の背中には羽が生えていた。自由に、優雅に、空高く飛べる権利があるのに、お母さんはその権利を奪った。羽をもぎ取って、籠の中に閉じ込める。私はただ、飼われていた。
お母さんと弟の三人で、小さくて、古いアパートに住んでいる。玄関を入るとすぐに狭い通路があり、その通路に台所、洗濯機、三点式ユニットバスがある。通路を抜けると八帖のワンルームがあって、真ん中に、長方形の木製でできたテーブルが置かれている。寝るころになると、そのテーブルを端に寄せ、押し入れから布団を取り出して真ん中に三枚並べて敷く。視界に映るのはテーブルとゴミ箱と箪笥だけで、他は何もない。テレビなど情報が入るものがないため、外の状況は友達から訊いている。そんな狭くて淋しい部屋でも、お母さんの傍にいるって感じていられるから、この部屋が嫌いではなかった。
お父さんがいなくなってから、お母さんは人が変わったように狂いだした。少しでもお母さんの機嫌を損ねると、山の中へと連れて行かれて、そこで痛いお仕置きをされる。今までそんなことは無かったのに、お父さんがいなくなってからは、顔色を窺って生活することが当たり前になっていた。
ぐうっ、とお腹の虫が鳴いた。
台所で餌を作るお母さんのもとに、段ボールを持って駆け寄った。
「お母さん。お腹空いた」
ふにゃふにゃになった、両手ほどの段ボールを突き出して、私は餌を求めた。そうしなければ、餌をくれないからだ。
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