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「ん」
フライパンから、少し焦げ目のついた野菜が、段ボールの上に転がった。
「光輝にもやりな」
「えっ」
今日の餌は少ない。いつもなら弟の分は別で作ってくれる。きっと機嫌が悪いんだ。
「文句あるの?」
首を横にぶんぶんと振った。反抗したらお仕置きが待っている。首を横に振ることしか私にはできない。あの痛みを味わうなら、こんなことぐらい耐えられる。
段ボールから野菜の熱が伝わってきた。私はそそくさと餌を、弟のもとに餌を運んだ。
「光輝、食べよ」
胡座をかいて座る弟の足もとに、野菜の載った段ボールを置いた。私たちはテーブルで餌を食べてはいけない。だから床で食べている。テーブルを使うのはお母さんだけの特権だ。
「姉ちゃんも食べるの?」
「うん」
「……少ないね」
突然、バンッと大きな音がした。ビクッと体を跳ね上がらせ、音の方へ視線を向けると、お母さんが弟を睨んでいた。音の原因はフライパンを床に叩きつけたせいだ。床にフライパンが、ふぁんふぁんと弧を描いて回っている。
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