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「光輝、おいで」
優しく微笑むその顔の裏には、怒気を帯びていた。
「ごめんなさい……」
怒気を感じ取ったのか、弟は危惧する。
「おつかいに行こうか。上手にできたら許してあげる」
「……本当?」
「うん」
嘘だ。嘘だとわかっていても、教えることができない。
弟はお母さんのもとに駆け寄ると、一緒に外へと出ていった。
再び腹の虫が鳴いたので、餌を食べることにした。野菜を指で摘まみあげ、それを口に運び、歯で噛み砕く。甘味が口の中に広がり、細かくなった野菜は胃の中へと落ちていく。
気が付くと、頬に涙が伝っていた。野菜が美味しいからではない。何か別の感情だ。
――私はそれが、何の感情かわからなかった。
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