作戦始動

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「卑弥呼。」 生徒会室に卑弥呼は居た。 醍醐は卑弥呼の前に座ると,卑弥呼にある物を渡した。 「何?」 「チュッパチャップス。 イチゴ味だ。 好きだろ?この味。」 卑弥呼は何も言わず,チュッパチャップスを口に含む。 「・・・まぁ,何だ。 龍馬のことはさ,いや,義姫のことか。 あんま気にするな。 ただの妄言だと思ってくれれば,それで良い。」 ひとしきり,言い終わった醍醐は卑弥呼を見た。 卑弥呼は,黙って手元を見ている。 「・・・わざわざ,そんなことを言いに来たの?」 そう言うと卑弥呼は顔を上げて,醍醐の顔を見た。 卑弥呼の顔には珍しく笑みが浮かんでいる。 「・・・は?」 「あの時の龍馬の顔を見た?」 卑弥呼は懐かしむような,優しく笑いながら続けた。 「もの凄く,罪悪感にまみれた顔をしていたわ。 本人は隠しているつもりだろうけど,バレバレよ。 それに,義姫。 私と,彼女が仲良いって醍醐知らなかった?」 「卑弥呼と・・・義姫が?」 「そう。」 醍醐は驚きを隠せない顔をしている。 それを見た卑弥呼は,堪えきれずに少し吹いた。 「ははっ。 そんなに驚かないでよ。 ・・・そんなに,私と義姫の関係が意外だった?」 「あぁ。 想像も出来なかった。」 卑弥呼はそれを聞いて,立ち上がり窓の近くまで歩いて行った。 「義姫ったら,何を考えているのかは分からないけど,楽しそうだったわよ。 龍馬は顔が死んでいたけどね。」 醍醐はお茶を飲み干すと,卑弥呼の方へと向き直った。 「勘が鋭いってのは,ここまで厄介だとはな。」 「なにそれ。」 「いや,何でもない。 最後のあの一言も,本気じゃないんだろう?」 卑弥呼はくすっと笑うと,窓の外,青く広がる空を見上げた。 「さぁ,どうだろうね。 ただ,最近龍馬が生徒会の仕事をサボり気味だったからね。 ちょっと釘を刺しただけよ。」 「えげつない釘の刺し方だな。」 そう言うと,2人は少しの間お互いに笑った。
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