59人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「…それはホンマか」
美空は顔の前に持ち上げたサッポロビールのジョッキの向こうで、目付きを鋭くする。
「東雲が明後日からスクランブルに着く。今日、お前とやらせたのはその為だ」
「背広は何を考えとるんや。ヒヨッコなんか上げられるかボケ」
サッポロビールのジョッキを叩きつける美空。
「同感だ。だが背広は待ってくれない。明日にでもお前にスクランブルの訓練を頼みたい」
朝井は真っ直ぐに視線を向ける。
「そないなもん、自分でやれるやろ。俺もお前もヤツガシラの一人や。実力は変わらへん」
美空は目線を朝井から外し、肘を付いた。
「機体カラー、美空は洋上迷彩だろ?フランカーに近い機体でやりたい」
「…ちゅうことは、土岐もやな」
「やってくれるか」
朝井の右の口角が上がる。
「よう考えれば、アグレッサーの役目はドッグファイト相手だけちゃうわな。引き受けたるで」
ヤレヤレと溜め息を吐いて頷いた。
「恩に着る」
「水臭いわ。ほな、高宮の奢りや。飲んどかんと損やで」
美空は朝井のグラスにニッカのウイスキーを並々と注いだ。氷の回る軽快な音が、2人の心に染み入る。
最初のコメントを投稿しよう!