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「すみません、高宮さん」
東雲は深々と頭を下げた。
「いや、俺の責任だ。お前を活用出来なかった。すまねぇな」
高宮も頭を下げる。
「でも、20万も…」
「まぁ20万は惜しいけどな。これが実戦なら、金の代わりがお前や俺自身、家族に国民だろ?」
そこまで言って、高宮は一旦息を吐いた。
「教導隊に負けて、飲みに行って支払いの時にな。あぁ、金で済んでよかった。部下や自分の命じゃなくてよかったって、思うんだ。そう思うと、恐怖で手が震えるよ」
高宮は自分の手を見ながら苦笑する。
「そうですよね。自分も、車で済んでよかった。そもそも、自分の車も守れない人が、国を背負える訳がないですよね」
「当たり前だ。だからな、いつかその気持ちを教える立場になりたい」
見詰めていた手を、力強く握り締めた。
「教導隊パイロット、ですか」
「あぁ」
高宮は美空の背中に視線を移し、頷く。そして、こう言った。
「俺はいつかヤツガシラの一角、美空さんを越える」
彼の荒い吐息は、白い煙となって灰色の空に消えた。
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