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23rd December
千歳市街
居酒屋〈天船〉
「高宮と東雲が世話になったな、美空」
ウイスキーのグラスを片手に口を開いたのは、東雲属する第201飛行隊〈セイレーン〉を率いる男、朝井三等空佐。
「何がや朝井。お前もなかなか性悪やな。1年目から俺と戦わせるとは」
豚串を勢いよく引きちぎり、美空は苦笑した。
「俺だって1年目からコブラとやらされたさ。あんときのT-2の機動は忘れらんねぇ」
朝井はアルコール36度のウイスキーをイッキに煽り、回想に耽った。教導隊のT-2の動きは、練習機とは思えない旋回、上昇、加速だった。当時もイーグルを駆っていたにも関わらず、いとも簡単に撃墜判定を受けたのだ。
「その話何回目やねん。聞き飽きたわ」
美空はそう言いながらも、同じ事を体験し、同じ事を思っていた。しかし今は、その話をしに来たのではない。
「で、話って何や」
話題を本題へ持って行く。
「そうだ、美空。1年目のヒヨッコに、スクランブル待機が命じられるかもしれない」
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