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「ねぇ、知ってた?」
テーブルを挟んで座っている俺に向かって、身を乗り出し質問してくる里美。
「知らねぇ」
「ちょっと、まだ言ってないじゃないの! 私が言いたいのは、私が敬介のこと好きだって知ってた? って聞きたかったのよ」
「は?」
里美が俺を…?
好き…?!
そんな素振り、一回だって見せた事なかったよな。
実際、本命を手放す事もなかったじゃねぇかよ。
何を今頃になって……。
「私、騙すの上手いからね! 気付かなくて当然。知られてたら、私達の関係もこんなに続かなかった筈だし」
そこまで言うと立ち上がり、冷蔵庫から缶ビールを2本取り出し戻って来ると、1本を俺に差し出して話を続けた。
「好きだったけど、敬介に妥協できなかったのは私。でもね、こんな関係でも、一緒にいる時は幸せだと思ったのも本当よ。人は一人じゃ生きていけない。誰かに傍にいて欲しいって…敬介はそんな風に思ったことない?」
「…ねぇな」
「嘘」
俺がないって言ってるのに、お前が否定する必要ないだろ。
知った顔をする里美にイラつきを覚え、ビールを体内へ流し込む事でその感情を抑え込んだ。
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