Vol.2 もう一つの顔

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「敬介君、お願い。また会ってくれる?」 自分の状況を一瞬忘れ、顔も知らない女の心配していた俺に迫って来る、名前も知らない女。 「悪い。もう会えない。ごめんな」 「どうして?」 「今、本気で惚れてる奴いるから」 頼むからこれで納得してくれ。 ……そんな俺の願いは、残念ながら届かないらしい。 隣に腰を下ろし唇を噛締め俯く女は、どうしても納得出来ないらしく、声を低くして俺の言葉を否定する。 「そんなの嘘よ。どんな人? そんなの信じない」 最後は俺に睨みまで利かせて。 そりゃ、嘘はついてるが、お前と付き合ったつもりはないし、そんなにムキになられる筋合いもない。 お互い了承の上で一時を楽しんだんだから、それでいいだろ! と、思っても、 「嘘じゃない。本当だ」 って、突き通すしかない。 「その人、由里より綺麗なの?」 信じないと言いながら本気の女を知りたがる矛盾。 そして、感情的になってるのは、自分に自信があるだけにプライドが許さないってとこか。 ま、見た目は確かに綺麗な方なんだろうけど……。 それよりお前、由里って言うんだな。 やっと名前が分かったのは良いが、この由里って女に何て答えるべきか……。 此処は泣こうが喚こうが、下手に機嫌を取ってつけ上がらすより、お前より綺麗な女だって言っといた方がいいよな? 頭を高速回転で働かせ、答えを出そうとする俺に届く促す声。 「敬介、はっきり答えてあげれば?」 だよな。 ハッキリ言ってやって、騒がれたら店を出りゃいいんだもんな! って……ん?……待てよ。 今の声、誰だ? 敬介……だと!?
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