Vol.2 もう一つの顔

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自分に気合を入れ、盛大に溜息を付いてから、コイツの手の中にあるグラスを奪い取った。 「これはダメだ!」 グラスを奪った俺に反発こそしなかったが、『はいはい』と、返事をする言い方は、人を小バカにしているに違いない。 「それより……お前、全然違うじゃねぇかよ!」 隣にいる俺の声が聞こえないはずないのに、軽くスルーし、彩られた指先を弄っている。 「それに……何であんな事した?」 「うん? あんな事って、キスの事?」 まるで大した事でもないように、首を傾げ平然と答える。 「……あ、あぁ」 俺にとったって大したことじゃない! …が、コイツは別だ! 俺が遊んでいる女とは訳が違う! そう思うと、自然とどもってしまうのは仕方がない。 「あれは、昨日のお礼の気持ちが半分」 「…昨日の?」 あ?……あの事か? 「キスされそうになったの、助けてくれたでしょ?」 そうだ。 あの時は、未遂とは言えショックを受けていたアイツが…。 ショックを受けていたように見えたアイツが…。 戸惑う事無く人前で自らキスをして、今もまた、潤んだ瞳のまま僅かな笑みを浮べ俺を見る。 これが同一人物か? これがあの優等生……、 水野奈央……なのか?!
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