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「信じらんねぇ」
「何が?」
「昨日は貴島に襲われそうになって怯えてただろ?」
「クスッ」
俺の視線と交わると、失礼な事に水野は可笑しそうに笑みを零した。
「何だよ」
「あの時、怯えたつもりはないけど? 顔には『面倒臭せぇ』って書いてある敬介が、教師らしいことするから可笑しくて、笑いを耐えるのに必死だっただけ」
なにをっ!
笑いを堪えていただと?
だからずっと下向いていたのか!
「それより、穴が開きそうなんだけど。そんなに見惚れないでくれる?」
唖然と見つめる俺に水野からの注意が入る。
それほど衝撃が大きかったって事だよ。
元々綺麗な顔立ちは、メイクで更に磨きがかかって、これじゃ、さっきの別れたがらない男の気持ちも分からなくもないな、なんて思っちまうのも本当だが…。
だがな! 見惚れてたわけじゃない。
俺はな、普通に驚いてんだよ!
俺が知っている水野とあまりにも違う、横に座る水野にな!
学校内では、教師からも信頼の厚い優等生。
その風貌からはお嬢様な雰囲気を漂わせている、あの水野が…。
裏では、もう一つの別の顔があるなんて知ったら、驚かない方が可笑しな話だ。
それにしてもこの女…。
ムカつくことに、さっきから俺を呼び捨てにしてるし。
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