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俺から離れた水野の腕を引っ張り距離を縮める。
「ちょっと何?」
「いいから」
やっぱり。
バカかコイツは!
こんな状態で酒なんか飲みやがって。
「お前、熱あるじゃねぇかよ」
「大したことないわよ。寝れば直ぐに良くなる」
大したことあるだろ。
無理矢理、水野の額に押し当てた俺の手の平には、相当高いと思われる熱が伝わってきた。
「水野、送ってく」
「ヤダ」
『いいです』『大丈夫です』って、断るならまだ良しとしよう。
でもな…
ヤダって何だよ、ヤダって!
しかも、即答しやがって。
第一、こんな高熱があって一人で帰らす訳にはいかないだろ。
教師として失格だと言われても、この状態の水野を放って置けるほど、俺だって薄情じゃない。
「煩い。黙って送らせろ」
「聞いてた? 私はヤダって言ったんだけど」
「お前こそ聞いてんのか? 黙って送らせろって俺は言ってんだ」
「一人で帰れる」
「お前、ホント可愛くねぇな。そんな身体で途中ぶっ倒れたらどうすんだ。担いででも送ってくからな!」
熱のせいだと思われる潤んだ瞳で俺を軽く睨むと、諦めがついたのか、わざとらしいまでに盛大な溜息を落としている。
そんな事には気にも留めず、バックを水野から奪い持ってやると、肩を抱き寄せ店を出た。
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