Vol.3 重なる偶然

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「水野。おい、水野」 肩を僅かに上下に動かしながら息をして、俺に寄り添い眠る水野に、これ以上声を掛けるのは諦めた。 コイツの家で看病してやろうかとも思ったが…。 「運転手さん。この先の突き当りを右折して下さい」 俺んちで面倒見た方が動きやすい。 コイツの家に運んだ所で、何が何処に置いてあるのか分かりもしなければ、訊ねた所で、この状態じゃ水野も説明できないだろ。 暗闇に静かに停まったタクシー。 支払いを済ませ、なるべく振動を与えないように、ゆっくり水野を抱きかかえる。 軽い…。 コイツ、ちゃんとメシ喰ってんのか? 力が入らず、腕をダランとしてる水野を見下ろしながら、壊れ物を扱うように、落としてしまわぬように、そっとエレベータへと乗り込んだ。 ───ピピ゚ッ、ピピッ… ちっ…。 9度近くもあんじゃねぇかよ。 部屋に入るなりベッドに横たえ測った体温計。 指し示すそれは、思ってた通り高い熱である事を証明していた。 起きる気配もない、少し赤い顔で呼吸は乱れたままの水野を、冷やさなくてはと思うと同時に、もう一つ選択せねばならない事に躊躇する。 ……着替えさせる…べきか?
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