Vol.3 重なる偶然

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「おまっ、ご、誤解すんなよ? 汗掻いてたから着替えさせただけだからな! 何も疚しい事はしてねぇぞ!」 キョトンとした顔で俺を見た後で、クスッとその表情を緩ませる。 「別に私何も言ってないけど?」 動揺する俺に反して、至って落ち着いた女子高生。 調子が狂いまくりである教師の俺に、構わず言葉を続けた。 「理性は持ち合わせてるんだもんね? 大人の男だからね、沢谷先生!」 嫌味っぽく言われ、先日交わした屋上での会話を思い出す。 しかも、こんな時にだけ先生なんて呼びやがって。 「当たり前だ!」 「そう」 「ガキに興味はないんだよ」 「だけど……見たでしょ? 私のハ・ダ・カ」 その小悪魔的な笑み止めろ! そ、そりゃ全く見てないと言ったら嘘になるが……。 だが、あれは避けられなかった事故だ! 事故! 「み、見てねぇよ。目を逸らしながらやったからな」 「へぇー、そうなんだ。看病してくれたお礼に、それ位のサービスは許したのに」 だったら最初に言ってくれ。 グースカ寝てた癖に今頃言うな! 「なら、しっかり見とくんだったな!」 「じゃ、今から見る?」 「はっ? な、な、何言ってんだ、お前は!」 こいつは正気か? 熱で頭やられたんじゃねーのか。 「敬介面白い。嘘に決まってるじゃない」 腹立つな、コイツ。 俺をからかって楽しんでやがる。 「てめっ、いい加減にしとけよ。さっさと熱を測れ。俺はメシの用意してくるから、それまでもう少し寝てろ! いいな、分かったな!」 今一ペースが掴みきれず、キッチンへ向かう為に水野に背を向ける。 「ねぇ、敬介」 あ? 何だよ。てめぇは、まだ俺で遊ぶつもりか? 軽くイラつきながら振り返ると、真顔で俺を見る水野の視線とぶつかる。 「ありがと」 真面目にそう言われるのもまた調子が狂い、『おぅ』とだけ告げると、今度こそ、足早に部屋を出た。
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