Vol.3 重なる偶然

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「……意外」 テーブルに並べられてある食事を見て、失礼極まりない小悪魔が呟く。 「何が?」 「敬介、料理作れるんだって感心してるの。私の中のイメージじゃ、女性を食べるイメージはあっても、料理が出来る男には見えなかったから」 最低なイメージが、お前の頭ん中に植え付けられてるんだな。 あんな場面見られちゃ、何を言っても言い訳にしかならねぇし、本当なだけに返す言葉は見つからないが…。 「くだらないこと言ってないで、さっさと食えよ」 「うん。頂きます……ん…美味しい」 「そっか。一杯食えよ。もう少し食って太れ」 「出た、セクハラ発言」 顔色一つ変えずに淡々と話す水野。 ふざけて言うなら兎も角、そんな真顔で言われると、本気で俺がセクハラしてるみたいじゃねぇかよ。 「あのな、俺は心配して言ってやってんの。お前、軽過ぎだぞ。ちゃんとメシ食ってんのか? 一人暮らしだからって、適当に済ましてるんじゃねーの?」 「食べてるよ。でもあまり太る体質じゃないの。出てるとこは出てるんだけどね」 「そりゃ分かるけど……あっ、」 今、俺……墓穴掘らなかったか? 「分かるけど?」 ねっとりとした口調で、語尾を上げそこまで言うと、水野はニヤリと笑った。 「やっぱり敬介見たんだ。私の出てるとこ」 「バカ、ちげーよ! んなのは服の上からでも分かんだろ」 「沢谷先生って、そんな所まで良く見てるんだね」 ああ言えばこう言う奴だ。しかも、先生と名前とを使い分けやがって。 食欲喪失しかかりながら、無理矢理食べ物を口に運び、誤魔化す自分が情けない。 「それより、明日からテストなんだぞ。具合悪いのにあんなとこで男と会ってる場合じゃないだろ。体調管理ぐらいきちんとしろ」 「ふふっ。都合悪くなって、話すり替えたね」 俺の心理は読まないでいい。 あまり食欲がないのか、野菜スープを飲んでいたスプーンを置くと、きっぱりと水野は断言した。
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